外資規制
外資の参入については、原則としてその業種を管轄する官庁が規定しています。一定規模以下の事業に対しては内資企業を保護する観点から外資の参入を禁止または制限しているものの、外資に対しては比較的オープンな姿勢を採っています。
製造業、小売、卸売、サービス業などは一部を除き外資100%で行うことができます。2009年以降、一部業種に対してあったマレー人の資本参加を要件とする「ブミプトラ資本」の保有を求める規制が廃止されました。しかしながら、特定の事業に進出する場合は所轄官庁の許認可が必要で、その際に「ブミプトラ資本」を要求される場合もあるため、事前の確認が必要です。
進出形態
営利行為を行えるものとして、「現地法人(有限責任会社)」「パートナーシップ」「個人事業主」「支店」があります。非営利行為にとどまるものとしては「駐在員事務所」があります。個人事業とパートナーシップは外国人が事業を行う形態としては一般的ではありません。支店も政府との合同プロジェクトなどの場合には認められるものの、外国人の一般的な進出形態ではありません。
〈現地法人〉
資本金 :会社法上、最低資本金の定めはないものの、外国人駐在員の就労許可取得のための最低資本金は100%外資
の場合50万リンギ。流通・サービス業・レストランの場合は100万リンギ。
株主 :1名以上
株式 : 普通株、優先株など定款の定めにより、異なる種類に株式を発行することができる
議決権 :特別決議(会社名変更、定款の変更、減資、会社の清算など)の場合は出席株主の議決権の4分の3以上が必
要。普通決議(特別決議以外の事項)は出席株主の議決権の過半数が必要
経営陣 :居住取締役1名以上、会社秘書役1名
〈駐在員事務所〉
活動は、市場調査や現地法人設立のためのフィージビリティスタディなどの非営利行為。有効期間は原則2年で、その都度更新が必要。年間30万リンギの事業経費支出要件。
現地法人設立から就労ビザ取得までの流れ
01/
会社名の登録・設立登記
会社秘書役を通してマレーシア企業委員会(CCM)に設立登記を行います。
株主、取締役、事業内容、資本金などを決定し、登録します。登録住所は会社秘書役の住所地になります。
02/
銀行口座開設・資本金振込
01の登記書類を銀行に提出し、口座を開設します。
資本金を払い込んだ後、払込証明を会社秘書役に提出し、CCMに登録します。
03/
事業所の決定・ビジネスライセンス(Business Premises Licence :BPL)の取得
事業所が決定したら、その事務所の所在する地方自治体(市、郡など)にビジネスライセンスを申請します。
許可の有効期間:通常1年ごとに更新(各自治体により異なる)
04/
事業内容に応じ各種ライセンスを取得
行う事業に応じ、それぞれの官庁からライセンスを取得します。
外資規制がある業種では、設立登記の前にあらかじめ関係官庁に確認しておく必要があります。
IT事業におけるライセンス取得:マレーシアでのIT事業の投資・ビザ取得....read more
05/
イミグレーションへの会社登録(ESD)・就労ビザを取得
新設の会社はまずイミグレーションオフィス(ESD:Expatriate Services Dividion)に会社の登録を行います。
その後、個別の就労ビザをESDから申請します。
会社設立から就労ビザの取得までには通常、半年以上の期間を要します。特にライセンスとビザの申請は長期化する傾向にありますので、効率的に手続きを行うことをお勧めします。
優遇措置
投資への主な優遇措置は下記のとおり
パイオニアステータス: 投資奨励業種、特定の地域、製造業などに対し、5年間法定所得の70%を免税
投資控除(ITA) : 通常のキャピタルアローワンス(税務上の減価償却)とは別に、適格資本的支出(工場、機械、設備など)
に対し、その60%の所得控除枠を付与
再投資控除(RA) : 操業開始から36カ月間を経過した企業が追加投資を行う場合、適格資本的支出に対して、その60%の所得控
除を付与。各年度における法定所得の70%と相殺することが可能
プリンシパル・ハブ : 地域統括拠点として認められた場合、その事業規模、内容により0%、5% または10%の法人税率の優遇措置が
付与される
マルチメディア・スーパー・コリドー(MSC):
IT開発の拠点としてマレーシア国内の認定サイバーシティに設立する場合、認可された企業は、最大10年間
(5年+5年)にわたり対象所得の70~100%の法人税免税措置、外国人知的労働者に対する必要な就労枠の確
保等
自動化(Automation Capital Allowance Expenditure):
労働集約型の製造業が、自動化のため機械等の投資を行った場合に、その適格資本的支出に対して20%+
80%の加速度償却および100%相当額の免税など。2020年度よりサービス業も対象となり、ソフトウェアなど
に適用される
その他、直近の税制改正による優遇措置