マレーシアの求職市場を見ると、コロナ渦以降、若い世代を中心にWFH(在宅勤務)やパートタイマー、リモートワーカー、業務請負など、よりフレキシブルな働き方を好む人が増えていると感じます。最近行われた調査では、調査対象者のうち53%の人が勤務時間外や週末に副業を行っているという調査結果も出ているようです。今回は、会社がフレキシブルな働き方を好む人を雇用する場合にコンプライアンス上、知っておいた方がよいポイントをまとめます。
1. マレーシア雇用法上の取り扱い
雇用法ではFull-time(正社員)とPart-Time(パートタイマー)の区分があり、パートタイマーは正社員の就労時間/週に対し、30%以上70%以下の就労時間で働く人のことを指しています。週5日(例:月~金)であれば正社員は週40時間勤務となり、パートタイマーは週12~28時間の間で勤務する人になります。それ以下の場合は、Casual(業務委託)契約として区分されます。
2023年1月から施行された改正労働法では、労働者は雇用者に対し、就業時間・就業日・就業場所についてフレキシブルな勤務形態の導入を書面で求めることが可能としています。雇用主が受け入れない場合、申請から60日以内にその理由を付したうえで拒否することができます。
雇用法には副業についての記載はありません。会社が副業を禁止する場合は、就業規則や雇用契約書にその旨を明記することが重要です。
2. 社会保険上の取り扱い
マレーシアの社会保険制度は、年金制度(EPF:従業員積立基金)、労災給付制度(Socso:従業員社会保障)、失業保険(EIS:雇用保険)で構成されており、雇用者との雇用契約に基づいて勤務し給与を得る場合に納付義務があるとしています。上記の1うち、原則として正社員とパートタイマーが対象になります。Casual(業務委託)契約は第三者との契約となるため対象外となりますが、社員と混同しないよう請求書に基づく支払い処理を行うことが重要です。
3. 税法上の取り扱い
正社員とパートタイマーの場合、雇用者は毎月の支給額に応じて源泉所得税(PCB)を計算し、納付額が出る場合は支給額から控除し納付する義務があります。PCBの計算は扶養家族等にもよりますが、独身の場合で年間支給額が34,000リンギを超える場合に発生し、納付額は税務当局が提供するサイト(http://calcpcb.hasil.gov.my/)でも計算可能です。
Casual(業務委託)契約や副業などを行っている場合は、本人が確定申告により税金を精算する義務があります。
雇用者が良い人材とその定着を目指すにあたり、フレキシブルな働き方への対応は必須の条件となってきています。今回記載したコンプライアンスのみでなく、これらの人材に対する育成や人事評価なども含め、人の働き方の多様性に柔軟に対応できる社内人事制度の構築が求められます。
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