税務当局は、会社に雇用されている従業員が退職もしくは駐在員が帰任する際の個人所得税のタックスクリアランス(税務債務の完済手続き)の運営要領のアップデートを行いました。税務行政のオンライン化が進んでおり、タックスクリアランスに関しても従来の窓口での提出に代えてオンライン(MyTax Portal)による提出になっています。
1. タックスクリアランスは雇用者の義務
会社に雇用されている従業員が退職もしくは駐在員が帰任する場合に、その従業員のタックスクリアランスを行うことは雇用者の義務となっています。タックスクリアランスの様式にはその用途により下記があります。
雇用者は税務当局に届け出を行うとともに、税金の完済に十分な納税資金を予め従業員から預かり、タックスクリアランス時の税務査定で追加の税金が発生した場合は、従業員に代わって納税する義務があります。
尚、行政手続きの簡素化のため、下記のような場合は提出義務が免除されます。
従業員の給与が課税対象ではない場合
マレーシア人従業員で、毎月の給与計算において源泉所得税が徴収・納付され、退職金等の支給がない場合
退職に伴い退職金を受領するが、同じ雇用者に再雇用される場合
雇用者がタックスクリアランスを怠った場合、200~2万リンギの罰金または/および6か月以内の禁固刑が科されます。
2. 提出書類
タックスクリアランス様式と一緒に提出する書類は各様式によって異なりますが、駐在員が帰国する場合には下記の書類を提出します。
(a) 帰任年の1月から帰任日までの個人所得税の計算
(b) パスポートの全ページコピー(雇用者によるパスポートの真正認証が必要)
(c) 駐在期間におけるマレーシアへの入出国履歴
(d) 過去3年分の源泉徴収票(Form EA)
従来と異なる点として、以前(b)は税務署がパスポートの真正認証を行っていたため、税務署の窓口にパスポートを持って行く必要がありましたが、本運営要領では雇用者が代わって真正認証を行い、その証として会社のスタンプをパスポートコピーの各ページに押印します。
3. タックスクリアランスにおける税務当局の査定業務
タックスクリアランス申請が提出されると、税務当局は税務査定を行い所得税の再計算および未払税金の有無を確認します。入出国履歴は納税者の居住判定(マレーシアの滞在日数により居住者・非居住者を判定)に必要ですが、入出国にe-gateを利用しておりパスポートに履歴が残っていない場合で、税務署が居住者・非居住者の判定に必要と判断した場合、税務担当官より履歴をイミグレーションオフィスより入手するよう指示があります。
税務査定の結果未納や追徴税額がある場合、雇用者が本人に代わり納税を完済し、タックスクリアランスレターが発行されます。通常、個人所得税の確定申告は従業員本人が行っていることも多いかと思いますが、追徴税額が発生し本人からその額を預かっていない場合、雇用者が負担することになってしまいます。雇用者としては、従業員が申告漏れや誤った申告をしていないか申告状況の管理を行うことが重要です。
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