政府が環境への配慮の一環として進めるEVシフトへの戦略は、ここ数年の予算案や政府の国家中期計画でもその強化の方向性を見ることができます。今回は税制を含む、政府のEVシフト政策についてまとめます。
1. 税制以外の取り組み
政府のEV産業育成への取り組みは、税制以外のところでも進められており、今年になりEV大手の米テスラ社や、中国の浙江吉利控股集団によるペラ州での新EV車の開発拠点の誘致などにも見られます。マレーシア投資開発庁によると、18年から23年3月までに58のEV関連投資申請を承認、投資額は262億リンギになるとしています。
24年予算案では、政府公用車やバスをエンジン車からEVにシフトしていく、と発表されました。公共の充電スタンドが少ないことはEV普及の懸念事項の一つですが、運輸省が制定した「Low Carbon Mobility Blueprint 2021-2030」によると、25年までに10,000ヶ所の公共の充電スタンドを設置することを目標にしています。
ASEAN近隣国でもEV産業への取り組みが加速化しており、現在はタイがマーケットシェアにおいて一歩リードしていますが、政府もこれに後れをとることなく次世代の域内ハブ化を目指ししのぎを削っています。
2. EV関連優遇税制の概要
税制に関しては、EVの製造、輸入、販売、購入から、EVバッテリー、充電設備まで、下記のような税制上のインセンティブを設けています。
3. 国内EV産業の強化を優先
現在、完成EVの輸入は10万リンギ超のものに限られており、輸入関税等を免除したところで一般庶民には高額で普及しづらいと言われています。この規制はいずれ緩和されることが予想されますが、政府は緩和した時に国内EVが輸入EVに対抗できるよう、まずは国内EV産業の強化を優先課題としており、それは完成EVよりCKD部品の輸入免税措置を長く設定していることからも読み取ることができます。また、製造業に対する法人税の免税等(上記2)については、その要件の中に従業員の80%がマレーシア人で構成されていることや、現地サプライヤーとの一定の関与度合いを維持することなどがあり、国内の労働力や産業を保護することにも注力していることが分かります。
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