2021年政府予算案が11月6日に発表されました。また、予算案に続き税制改正法案であるFinance Bill 2020が公表されています。今回はその中で主な優遇税制についてまとめます。
予算案で発表された優遇税制は、先に発表されたコロナ禍におけるPENJANA(国家経済回復計画)からも繋がるものとなっています。コロナ禍において景気が低迷する中、各国は速やかな景気回復に向け新たな投資を呼び込む必要があります。優遇税制を見れば各国政府が国の発展に向け重要と考える業種を理解することができますが、今回の予算案では、コロナの状況を受け主に医療やその研究開発、雇用を生む製造業などに焦点が当たっているのが分かります。
一方、地域統括拠点についてはASEAN主要国が優遇税制を設けるなどしてその誘致を進めています。マレーシアは「プリンシパル・ハブ」と呼ばれる優遇制度を2015年から設けていますが、シンガポールやタイにも同様の制度があり、比較すると下記のような概要になっています。
MIDAの発表によると、2019年末時点では35の企業に対してプリンシパル・ハブが承認されているとありますが、その承認数の少なさからも分かるように、タイの同制度と比較すると要件のハードルが高く、申請できる企業が自ずと大企業に限られるという難点がありました。政府としては、制度に関し近隣国との競争力を上げるため、雇用する従業員数やキーポストの人数、年間事業経費などについて、その要件を緩和することが提案されました。また、グローバル・トレーディング・センター(国際貿易業)については、従来のプリンシパル・ハブから別枠にて優遇税制が設けられることになりました。
ジェトロはASEANにおける日系地域統括会社への調査を定期的に行っていますが、調査からも分かるように日系企業に関しては、地域統括会社の設置は優遇税制ではなく、その「機能」と「役割」、「人材の質」、「費用(設置コスト)対効果(節税額)」を総合的に勘案して設置国を決めている傾向にあります。地域統括会社の誘致は、優遇措置だけではなく、産業全体の底上げにより魅力的な市場になるような制度の改革を行うことが求められます。
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