マレーシア政府は、6月3日に来年度予算に向けての方針(2023 Pre-Budget Statement)を発表しました。政府が予算に向けての方針を事前に発表するのは2度目となりますが、これは行政の透明性と説明責任の向上に向けた取り組みの一環となります。
1. 基本方針
2022年予算ではコロナからの回復に向けた様々な施策を導入しましたが、2023年も引き続き、「国民の幸福」「経済回復」をより安定的で持続可能なものにすることを基本方針としてあげています。特に、これからの立ち直りが期待される旅行業界や、経済のベースを支える中小企業に対するサポートをより強化していく方針を打ち出しています。
税収に関しては、2022年予算では約1,700億リンギもしくはGDPの10.5%相当の税収目標を掲げていますが、今年1~4月までの実績では、直接税で目標の35.8%、間接税で39.4%を達成しており、これは予定より早いペースで、後半も経済の回復スピードに伴って堅調な税収が期待されると見ています。
2. 税収に関する戦略
コロナからの回復を後押しするため、2022年予算では総額62億リンギ規模の減税措置を個人・法人に提供しました。一方では脱税等を阻止するため、18歳以上の全国民に対する税務番号登録の義務化や、税務当局の銀行口座情報へのアクセス強化、新たな源泉所得税の導入などを進めています。
2023年の予算に向け、税制改革について政府は下記の3点について対策を進めていくとしています。
a. 国際的な税の動きへの対応
国際取引のデジタル化に伴い、その課税についてはOECDをはじめ各国の税務当局がその対策を急ぎ進めていますが、マレーシアも国際的な動きに沿った対応を進めていくとしています。本方針では、OECDが提唱している下記の2点について、マレーシアでの具体的な導入について技術的な検討を行うとしています。
① 多国籍企業グループの利益を、その売上の発生源となる国々で何等かの数式を用いて配分し、課税する方法(例:ソーシャルメディアの国別ユーザー数等をベースに配分するなど)
② 多国籍企業グループが事業を展開する各国において、最低でも15%の法人税率(Minimum Rate)で法人税を課税することを徹底することでタックスヘイブン(軽課税国)に所得が移転することを防止する:適格国内ミニマム課税制度(Qualified Domestic Minimum Top-Up Tax)の導入
b. 税収増に向けた戦略(e-Invoicingの導入)
マレーシアの次期5カ年計画である「第12次マレーシア計画」の中にデジタルサービス提供のためのインフラ強化を掲げていましたが、それに伴い税務行政のデジタル化を推進するとしています。具体的には、納税者のコンプライアンスコストを削減するためe-Invoicingを導入し、2022年予算で発表された税務番号登録の徹底と合わせて税の捕捉を強化するとしています。
c. 税制・税のシステムの強化
税制改革評議会(Tax Reform Committee)による提言を引き続き導入していき、特にマレーシアとクロスボーダー取引を行う海外の納税者を含むより広い納税者を捕捉すること、税務職員のトレーニング強化による税収増を掲げています。
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