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マレーシア 2023年度税制改正案

2023年政府予算案が10月7日に発表されました。10日には下院議会が解散になったため、今後は総選挙を経て新内閣が発足された後、予算案は再提出されることになります。今回はその中で税制改正の概要についてまとめます。


23年予算案では、歳出総額は前年比3.4%減の3,723億リンギ、歳入は4.4%減の2,726億リンギと見込んでおり、歳入のうち2,052億リンギは税収からの歳入を見込んでいます。22年の実質GDP成長率は6.5~7%になるとの見通しで、本予算では23年の成長率の予測が4~5%と鈍化することを前提としています。


本予算案における税制面での主な提案は下記のとおりです。


1. 個人所得税

以前の税制改正では低所得者層を対象にした減税が行われましたが、本予算案では「M40」として定義されている中間層を対象にした減税が提案されており、具体的には年間の課税所得が5~10万リンギの部分に対し2%の減税が提案されています。一方、課税所得25~40万リンギの部分については、現在の24.5%が25%になります。これにより、課税所得が40万リンギまでの中間層は1,000リンギ、それ以上の高所得者層は250リンギの減税となることが見込まれています。コロナによる規制の緩和後、消費は増加傾向にはありますが、昨今の物価高を考慮し、国民の可処分所得を少しでも増やし消費に繋げてもらうことを意図してい

 また、所得控除面では、医療費やCovid-19の検査費用にかかる所得控除の適用範囲を拡大することなどが提案されています。


2. 法人税

GDPの45%相当の貢献度があるとしている中小企業(MSMEs)に対し、その成長を促すあらゆるサポートを行うとしており、税制面では中小企業の課税所得10万リンギまでの税率を従来の17%から15%にするとしています。


3. 優遇税制

国が積極的に推し進める分野である、電気自動車(EV)、二酸化炭素の回収・貯留を取り扱う業種などについては、新たな投資税額控除の優遇措置が提案されています。また、製造業・サービス業の自動化やグリーン優遇税制については現在の優遇措置が拡大・延長されます。


4. 国際的な税の動きへの対応

政府は炭素税を導入することを既に公表しており、23年予算では、その仕組みを確立するため1千万リンギの助成金を支出することを検討しています。

 また、OECDが提唱している最低法人税率15%(global minimum effective tax rate)については、マレーシアでも24年導入を視野に入れ、その準備を進めていくとしています。これは税の優遇措置や拠点を低税率国に移すことでグループ全体の全世界ベースでの税負担が15%の実効税率に達していない企業グループ等に対し、全世界ベースでの税負担が少なくとも15%になるよう国際的な税の配分を行う制度で、現在のOECDの提唱ではグループ全体の売上が750百万ユーロ以上など主に多国籍企業グループがこの制度の対象になるかと思います。


5. 税務行政・その他

6月に発表された「予算に向けての方針(2023 Pre-Budget Statement)」にも記載されていた、税務行政のデジタル化を推進する電子請求書制度(e-Invoicing)は、一部の納税者をその試験的導入の対象者として選定し、2023年の導入に向け準備が進められています

 また、22年予算案で発表された18歳以上の全マレーシア人に対する納税者登録(Tax Identification Number: TIN)の義務付けに関し、2023年までに18歳以上のマレーシア人には自動的にTINを発行すること、印紙税の納付時にはTINを使用することを義務化することが提案されています。



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