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マレーシア2024年度税制改正案

2024年政府予算案が10月13日に発表されました。歳出総額は前年比0.8%減の3,938億リンギ、借入を除く歳入は前年比1.5%増3,076億リンギで、増税もしくは課税ベースを広げることによる税収増を見込んだ予算となっています。


1. 個人所得税

23年までの改正では、低所得者層や中間層を対象とした所得税率の減税が行われましたが、今回は税率の改正点はなく、医療費や介護費、ライフスタイル控除などの所得控除額や対象範囲が拡大されています。

主な所得控除等の変更
主な所得控除等の変更

2. 法人税

優遇税制については、グリーン優遇税制等の政府が推し進める分野の優遇措置が拡大・延長されています。また、企業のESGと税務コンプライアンスへの取り組みを推し進めるため、関連省庁に対するESG報告や移転価格文書の作成、電子請求書制度(e-Invoicing)の導入にかかる費用に対し、5万リンギを上限とする損金算入制度が新設されています。

主な優遇税制
主な優遇税制

e-Invoicing制度の導入については、24年6月にまず年間売上1億リンギ超の大企業から導入することを予定していましたが、それが24年8月に延期され、その他の企業に関しては25年7月以降から順次導入されることになり、全体の導入スケジュールを少し遅らせる形になっています。


3. 増税もしくは課税ベースの拡大

24年の税制改正は、コロナへの影響に配慮した23年までの減税方向から増税もしくは課税ベースの拡大に転換しています。主なものは下記のとおりです。


a. サービス税(Service Tax)の税率引き上げ、課税対象の拡大(24年3月以降適用)

サービス税の税率が6%から8%に引き上げとなります。ただし、飲食、通信など一部の業種は6%に据え置かれます。また、物流、配達サービス、仲介業などを新たに課税対象とすることが提案され、課税対象サービスが拡大されます。新たに課税対象となる企業は、課税登録および顧客への周知を行う必要があります。


b. 非上場株式の譲渡にかかるキャピタルゲイン税の導入(24年3月以降適用)

非上場株式の譲渡を行った場合、24年3月1日前に取得した株式については譲渡利益の10%もしくは売却金額の2%のいずれかを選択、それ以降に取得した株式は譲渡利益の10%が課税されます。同一グループ内の再編等に起因する株式譲渡等については免除規定が設けられる予定です。


c. 奢侈品税(luxury goods tax)の新設(導入時期未定)

一定額以上の宝飾品や時計などの特定品目に対し5~10%の奢侈品税が課税されます。海外からの観光客が購入するものについては免税規定が設けられる予定です。


d. 外国人(外国法人)による不動産取引等に関する印紙税(24年1月以降適用)

現行では不動産などの譲渡にかかる契約書等の課税文書は対価(時価)の額により1~4%の印紙税が課税されていますが、外国人(外国法人)が当事者となる譲渡に関する課税文書については一律4%の印紙税が課されます。


当初より論議を呼んでいたキャピタルゲイン税の創設ですが、課税対象や株の評価方法などの詳細については今後のガイドラインを待つことになります。多国籍企業が対象となるグローバルミニマム課税(GMT)については、25年の導入が発表されましたが、今後はおそらく国際的な流れを見ながら具体的な法整備が進められることになると思います。e-Invoicing制度については、ガイドライン等が随時公表されていますが、全納税者が対応しなければならないこともあり反響が大きく、導入時期が早速遅延する形となりました。


増税基調となった今回の予算案ですが、政府は支出削減等の財政改革にも着手することを掲げており、歳入と歳出の両面を強化することで先行きが不透明な世界経済の見通しに対応できるよう財政基盤を強化する、としています。



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