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「エイジレスワーク」に向けた国と会社の取り組み

更新日:2023年8月31日

マレーシアにおける多くの日系企業が20年、30年という社歴を迎え、現在のマネジメント層が間もなく定年を迎える年齢となっている企業も多いかと思います。労働人口の推移への対策は中長期的な戦略に基づき早めの対応が必要になることは、現在の日本を見ても明らかです。


本ブログでは、シニア層の活性化に向けたマレーシア政府の政策についてまとめます。


1. 定年退職に関する現行の制度

マレーシアでは60歳を定年退職としている会社が多いかと思いますが、下記の制度に基づいています。


a. 最低定年退職年齢法(Minimum Retirement Age Act 2012)

現在の最低定年退職年齢法では、従業員が60歳を迎えたときに定年となります。現行法は2013年に変更されたもので、現在はこれを引き上げる議論がされているところです。


b. 従業員積立基金(EPF: Employees Provident Fund)

マレーシアの社会保障制度の一つであるEPFは、就労期間をとおして積立てし、退職時に元本と利子相当分を受け取るものですが、年金だけではなく、住居の購入や教育資金など個々の人生に必要なタイミングに利用することもできます。EPFの制度があることにより自社では退職金を支給せずに、EPFを退職金に代える会社も多いと思います。現行の制度では50~54歳のタイミングで一部を引き出すことが可能、また55歳以上になると全額を引き出すことができます。


c. 退職金の支給に対する所得税の取り扱い

会社が退職金を支給する場合、退職する55歳以上の従業員が同じ会社に10年以上勤務する場合、支給された退職金にかかる税金は免除となります。退職時において勤続年数が10年未満の場合、「1,000リンギ×年数」の額が控除された後の額を課税所得に含めることになります。


2. シニア層の活性化に向けたマレーシア政府の取り組み

政府は将来的な人口構成の予測に基づき、持続的なGDPの成長のために政策を決定する必要があります。世界銀行の試算では、マレーシアにおいて1%の労働人口が増加することは一人当たりのGDPを0.5%押し上げる効果があるとしており、政府は将来的な高齢化社会を見据え、シニア層の労働市場への貢献を勧める下記のような政策を打ち出しています。


a. シニア層の雇用に対する優遇税制

60歳以上のシニア層や元受刑者、元薬物依存者などを新たに雇用する場合、法人税の計算上、所得の2重控除が与えられます。2023年の予算案で、25年まで延長することが提案されています(正社員、月給4千リンギ以下などの要件あり)。


b. 従業員社会保障制度(SOCSO:Social Security Organization)

政府の求人サイトMYFutureJobsをとおして要件を満たす40~60歳以上の雇用を行った場合、月800~1000リンギの給与補助が6ヶ月間にわたり与えられます。


3. エイジレスワークに向けた賃金・人事制度の見直し

会社が定年を迎えた従業員を再雇用する場合がありますが、これまでの待遇を一度リセットし再雇用時の賃金を減額することがあります。再雇用後の職務内容は定年前と同じで人事評価や賞与、昇給の対象外となるケースもあり、再雇用者のモチベーションに課題がある場合もみられます。企業としては、再雇用期間にその従業員がこれまで培った技術やノウハウを次の世代に引き継がせることを意図する場合もあるかと思いますので、再雇用にあたっては、会社が求める成果とそれに見合う報酬について両者が合意することが重要です。


マレーシアの推計人口構成:2045年
マレーシアの推計人口構成:2045年 出典:統計ダッシュボード(https://dashboard.e-stat.go.jp/)

日本の推計人口構成:2045年
日本の推計人口構成:2045年 出典:統計ダッシュボード(https://dashboard.e-stat.go.jp/)

国の人口構成の推移に一企業があらがうことはできません。シニア社員の活用は今後会社の成長を支える重要な要素になってきます。企業は、中長期的な人員構成、人件費分析を行ったうえで、エイジレスワーク(年齢で区別することなく、全ての年代の人々が希望に応じて、意欲や能力を活かして活躍できる働き方)に向けた賃金・人事制度の見直しを行い、シニア社員のモチベーション向上や本格的な戦力化に向けて早期に着手することが企業の持続的成長に優劣をつけるのではないかと思います。



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