昨年の選挙結果を受け、財務省は2月24日に新政権のもと2023年修正予算案を下院議会に提出しました。2023年の実質GDP成長率を4.5%と予測したうえで、歳出は予算案としては最大の3,861億リンギ、歳入は2,915億リンギに修正されています。
重点項目の一つとして、中低所得層や中小企業の支援強化を打ち出しており、税制上も優遇する一方で、全体の税収をカバーするため富裕層への課税強化や、課税範囲の拡大を打ち出しています。
1. 中低所得層への減税、高所得層への増税
法人税では、中小企業向けの減税が提案されています。現行の中小企業向け法人税率は、課税所得60万リンギまでが17%、60万超の部分に対し24%としていますが、これを課税所得15万リンギまでを15%とし、15~60万リンギの部分に対し17%、60万超の部分に対し24%に改正することが提案されました。2023課税年度より適用される予定で、最大で3千リンギの減税となります。
個人所得税では、年間の課税所得が3万5千~10万リンギの中低所得層について所得税率が2%引き下げられます。一方、課税所得が10万~100万リンギの高所得層に対しては、所得税率が0.5~2%引き上げられます。
2. 優遇税制
国家戦略に沿った形で、下記の優遇税制が創設または継続されます。
優遇税制は、国に何等かの恩恵をもたらす投資に対して設定されることが多いですが、付与された企業に対し、優遇税制の対象となった投資の結果に対するモニタリングの仕組みを強化することも今後検討される予定です。
3. 税収増への取り組み
税収を上げるための取り組みも提案されました。まず、導入時期は未定ですが、一定金額以上の奢侈品に対し、奢侈税(Luxury Goods Tax)の導入が検討されます。また、24年を目途に、非上場株式の譲渡益に対するキャピタルゲイン税を導入することが発表され大きな話題となりました。マレーシアはキャピタルゲイン課税がない数少ない国のひとつであり、資本市場の活性化の原動力の一つでもありましたが、導入時期が決まれば、M&Aや組織再編などの動向に少なからず影響を与えることが想定されます。
昨年は関税局が自主開示プログラム(Voluntary Disclosure:VD)を実施しましたが、今年は所得税(法人・個人)および間接税について23年6月から24年5月まで行われる予定です。過去の申告に誤りや無申告があった場合、期間内に自主修正・申告を行えばペナルティが免除されます。過去に実施された同様のプログラムでは一定の成果を上げており、納税者側には税務調査等で追徴されれば最大で40%のペナルティが課されところを、この期間に自主的に申告することで税負担が軽減されるというメリットがあり、税務当局側には税収を上げることができるメリットがあります。
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