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マレーシアのキャピタルゲイン税に関する議論

 現在、マレーシアでは原則として資産等の譲渡益(キャピタルゲイン)税は、不動産または不動産会社の株式の処分による利益にのみ適用され、金融商品などの譲渡益については課税されていません。一方で、政府は課税ベースを広げることで国民から広く税収を上げられるよう税制改革を進めており、キャピタルゲイン税の対象範囲拡大については、これまでもたびたび議論が上がっていましたが、外国投資家に対するアピールや配慮などもあり、なかなか実現には至っていませんでした。しかしながら、コロナにより財政赤字が拡大していることから、政府にとって追加の税収は喫緊の課題であり、いま再びこの議論が行われています。


 通常、株式や債券、仮想通貨など金融商品から得た譲渡益が課税の対象になるか否かは、その納税者がアクティブな取引を行っているかどうかが判断基準になっています。アクティブなトレーダーであれば、納税者はその所得を申告しなければなりません。


 自身がアクティブなトレーダーであるかどうかはどのようにして判断するのでしょうか。


 税務当局が過去の税務裁判などの判例に基づき、個人の行っている金融取引が課税対象となるか(アクティブな取引を行っているか)それともある程度の収入を生み出すだけの単なる趣味なのかを判断するために使用する指標に「Badges of Trade」というものがあり、下記のような基準で構成されています。


  • 利益追求の動機 :取引が利益の追求を目的として行われているか

  • 取引の頻度   :反復的かつ体系的な取引

  • 資産の性質   :取得した資産の種類や量

  • 同様の取引・利益の存在 : 取引が納税者が行う通常の業務に類似しているか

  • 資産の変更  :資産が改良されより市場性のあるものに変更されているか

  • 売却の方法  :売却・販売が組織的に利益をもたらす方法で行われているか

  • 資金源    :資金調達によりその資産が購入されているか

  • 取引間隔   :資産を保有する期間が長いほど、取引ではなく投資と認められる

  • 資産の獲得方法:資産が相続・贈与により獲得された場合、取引ではない可能性が高い


 「Badges of Trade」は金融商品に限った指標ではなく、例えば自身で作成した工芸品を販売するなど、最初は趣味で始めたことがいつしか組織的かつ体系的な方法で取引が繰り返して行われるようになりその性質が変化していくような場合など、あらゆる取引に適用されます。金融機関など関連分野で働く人が、その知識や経験を活用して自身や第三者のためにアクティブに取引を行っているような場合も想定されます。


 しかしながら、実務的には、こと金融取引についてはこのような判定を個別に行っていくことは非常に困難を伴うため、金融商品などの譲渡益に対するキャピタルゲイン税を導入する際には、金融機関に源泉徴収を課すなど、ある程度システムに乗った徴税方法になることが予想されます。現在、政府では株式の譲渡収益や企業が金融取引で一定の収益を得た場合などへのキャピタルゲイン税の導入について議論が行われているところです。








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