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マレーシア人従業員を海外に派遣する場合の留意点

 日系企業は従来、市場や製造拠点を求めて海外進出を行ってきましたが、海外現地法人の人材やノウハウの蓄積が充実してくる中、今後はグループ企業内でのグローバルな人事交流を含めた人材の活用が、企業の戦略上も重要になってきます。その一環として、現地法人の将来的な現地化を見据え、現地の責任者に日本本社の経営理念などを理解してもらうため、本社で一定期間勉強させたいという場合もあるかと思います。また優秀なマレーシア人は、マレーシア国内にとどまらず、東南アジアの近隣国で営業活動を行ってもらったり、あるいは関連会社の海外工場へ監督者として派遣したりなど、活躍の場も多いかと思います。


 今回は、会社がマレーシア人従業員を海外に配置する場合の留意点についてまとめます。


1. 海外に従業員を配置する会社の権利

 会社は、雇用条件が著しく不利益にならない限り、従業員を他の仕事や場所に配置させる権利があります。しかしながら、日本ほどは転勤を視野に入れた雇用が一般的ではないため、従業員を海外に配置する可能性がある場合、予め従業員を異動させる会社の権利を記述する条項を雇用契約書や就業規則に含めておくほうがよいと考えます。


2. 派遣形態の明確化と必要な文書の作成

 海外に従業員を配置する形態には、「出張」や「出向」、「転籍」が考えられます。「出張」と「出向」は従業員と会社の間の雇用関係に影響を与えない一時的な取り決めで、EPFなどマレーシアの社会保険は継続されます。一方で「転籍」は恒久的な異動を意味し、転籍先が新たな雇用主になります。会社は、海外勤務の雇用形態(指揮命令がどちらになるのかを含め)を規定等で明確にし、従業員の勤続年数の中断や、給与・手当などが、不利益な変更にならないよう配慮する必要があります。


(従業員を海外に配置する場合の主な形態)
(従業員を海外に配置する場合の主な形態)

3. 海外勤務期間中の税金の考え方

 従業員が海外で勤務する期間、どの国で納税しなければならないかについて、「居住者=納税者」の判定基準は国により異なります。またマレーシア所得税法では、マレーシア国外での就労が国内の業務と関連不可分であるとみなされる場合は国内の就労とみなされます。判定の結果、海外勤務期間中の給与等が、派遣元であるマレーシアと派遣先の双方の国で課税となるケースも出てくるかと思います。このような場合は、両国で締結している租税条約に「短期滞在者免税*」があり、その適用で一方の国で免税にすることが可能か、また双方で課税されることになる場合は、一方の国で「外国税額控除**」を行うことができるかなどの検討も予めしておくべきかと思います。



(マレーシア所得税法上の「居住者」の定義と租税条約)
(マレーシア所得税法上の「居住者」の定義と租税条約)

 優秀な従業員をグローバルに活躍させるには、その形態に応じ「海外赴任規程」や「海外出張規程」等を整備し運用することで、会社との間で交わされた「約束事」が明確になり、従業員も安心して働くことができます。グループ企業や地域統括会社レベルで統一したものを整備することも効果的と考えます。






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