税務当局は10月1日、雇用者に対する税務調査の指針(Employer Tax Audit Framework)を発表しました。具体的には、会社が従業員に給与等を支払う際に控除および納税すべき所得税に関するもので、同日付けで施行されています。コロナも落ち着きはじめ、税務調査が再び活発になっているところですが、コロナ前に行われていた実地調査に比べて、最近ではメールやオンライン形式での調査が増えており、よりポイントを絞った調査が行われるようになっています。
1. 指針の目的
税務調査に関する指針は税目ごとに発表されており、基本的には税務調査が透明性と公平さをもって行われること、また各税目についての納税者の権利・義務について明確にしています。
2. 本指針における雇用者の義務
従業員の雇用に関する雇用者の義務には下記のようなものがあり、日本で言うところの源泉徴収や年末調整義務、従業員の雇用時・退職時の届け出義務になります。
3. 税務調査の進め方
上記2が遵守されているかどうかを確認するため、下記の2つの方法で調査が行われます。
(1) 机上調査(主に上記2のA~Eが対象)
調査官がメール等で雇用者に給与に関するデータ(給与台帳や給与明細のサンプル等)を依頼し、そのデータと申告実績を確認する方法で行われます。調査官は会社を訪問することなく、基本的には机上で行われます。
(2) 実地調査(主に上記2のFが対象)
給与等の支払い時の源泉所得税の計算および納税額について確認するために、調査官が会社を訪問する形で行われます。
4. 調査対象期間等
通常は2年間(暦年)に遡って行われます。しかしながら、無申告や過少申告などが発見された場合は、更に2年間遡って行われます。調査対象者は、リスク分析、業種の特性や通報等をもとに選定されます。雇用者が自発的に修正申告を行う場合、調査前であれば会社が管轄税務署に修正申告を提出して行うことができますが、自主申告によりペナルティ等が軽減されるかどうかについては明記されていません。
5. 遵守されていなかった場合のペナルティ
調査の結果、上記2に関して遵守されていなかった場合、200~20,000リンギの罰金、または6ヶ月以下の懲役もしくはその両方が課されます。指針には、初回と同じような間違いを2回目の調査で再度指摘された場合についても記載されており、その場合、ペナルティが初回の監査日にまで遡って計算されること、もしくは起訴処分を行うなどより厳しい措置が下されます。
給与計算は通常、会社の人事部門で行われており、他の社員への給与情報の漏洩を防ぐ観点から、特定の従業員のみが関与する業務となっている場合が多いかと思います。源泉所得税の計算や控除が適正に行われているか、書類の整備がされているかなど、定期的に外部からチェックを行うことも重要です。また、本税目に限らず税務署からこのような情報依頼(調査通知)がメールで来る頻度が増えていますが、重要な情報等をメールで返信する前に、税務署に電話をするなどして(税務署を装ったメールではないか)確認されることをお勧めします。
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