コロナが落ち着き、企業が海外展開を再度拡大していく中、4月になりマレーシアに赴任し働き始めた方もいらっしゃると思います。最近では、駐在員、現地採用、リモートワーカー、フリーランスなど契約形態も多様化しており、どのような形態にせよ海外で働く際には自身が係わる国の税務について、会社任せではなく最低限理解しておくことも重要です。
1. マレーシアの会社に勤務する方の個人所得税・社会保険
マレーシアの会社で働き始めると、最初の給与が支払われる前にまず納税者番号を登録し、その後毎月支払われる給与等に対して会社が源泉徴収を行います。源泉徴収税額は、会社に申告した扶養家族、マレーシアでの滞在日数(居住者か非居住者か)の状況によって計算され、支給月の翌月15日までに会社が納付します。
個人所得税の対象となる給与所得について、主なポイントは下記になります。
a. 日本本社から日本の口座に支払われる給与(留守宅手当など)
マレーシアでは国内源泉所得(マレーシアで生じた所得)にのみ課税する方式を採用していますが、マレーシアで就労している方の日本で支払われた給与は、マレーシア国内で稼得したとみなされ、国内源泉所得としてマレーシアで課税されます。
b. 現物給与など
主な現物支給に対する課税・非課税判定は下記のとおりです。支出額の全額もしくは税務通達で与えられた計算式を用いて算出した額が課税されるもの、一定の非課税枠があるものなどがあり、会社はこの点を予め理解しておけば、税効率のよい福利厚生制度を設計することができます。
c. 会社が負担する個人所得税
赴任に伴い、マレーシアで納税することになる所得税の額が、本人が同じ給与額で日本において納税していた額を超える部分について会社が負担する場合があります。この会社が負担する税額は、本人への追加給与として課税されます。
d. 社会保険
外国人の場合、会社はその従業員を従業員社会保障制度(SOCSO)に加入させる義務があります。SOCSOはいわゆる労災給付制度で、従業員が勤務中もしくは通勤などで発生した傷病に対する保障になります。保険料は、給与が月5千リンギを超える場合は一律月61.9リンギを会社が負担し納付します。
また、従業員積立基金(EPF)については、外国人も任意で加入することができます。EPFはいわゆる年金制度で、就労期間をとおして積立てし、退職時に元本と利子相当分を受け取ることができます。EPFは6%程度の高い運用利率となっていますので、長期間マレーシアで就労することを意図する外国人の中には加入を希望する人もいますが、会社負担額もありますので加入については事前に会社の同意を得る必要があります。
2. マレーシアの給与所得以外の収入がある場合
最近ではマレーシアに居住し、給与所得以外にフリーランスや投資収入がある方も増えています。給与所得以外の収入がある場合は収入ごとに課税・非課税判定を行い、マレーシアで課税される収入をその年の確定申告で取り込むことになります。
マレーシアは国外源泉所得(海外で生じた所得)について原則課税せずとしていましたが、2023年1月より国外源泉所得のうち、マレーシアに持ち込まれたものに対しては課税されることになりました。これは個人については暫定的に2026年までは一定の条件を満たせば課税されないことになっています。収入の発生源、発生した国での課税の有無、稼得所得のマレーシアへの持ち込みについてはクリアにしておく必要があります。
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