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マレーシアの遺言書・エステートプランニング

更新日:2023年8月4日

保有する海外の財産について、生前に対策を講じることを「エステート・プランニング」といいます。


1.マレーシアの遺言書とは

 海外の遺言書は、その国の言語と法律に沿った形で作成する必要があります。海外の相続手続きは、日本と異なる難しさがあります。あらかじめ遺言書を作成しておくことで、プロベート手続きを含め、海外での相続をスムーズに進めることが可能となります。通常は、現地の弁護士などの専門家にその作成や保管を依頼します。


遺言書には下記の事項を記載します。


a. 財産・債務の内容

b. 財産の受取人

c.. 財産をどのように分配するか

d. 遺産管理人の指名

e. その他、必要と思われる事項


 

 マレーシアの遺言書の要件として、2名の証人の署名が必要になります。証人は財産の受取人がなることはできませんので、通常は法律事務所などに依頼する場合が多いかと思います。遺言書は、自身で安全な場所に保管するか、弁護士に預けることも可能です。


 なお、日本の遺言書に海外財産を記載した場合、法律的に無効になることはありませんが、言語の違いなどもあり、実務上日本の遺言書でスムーズに手続きができるかどうかはケースバイケースであり、複数国に財産がある場合は、各国ごとに用意されることをおすすめいたします。


2.エステート・プランニング

 遺言書は、本人の死後にその法的効力を発しますが、「委任状」や「生前信託」は、本人の生前も法的効力がある書類です。人生において起こり得る状況を予想し、必要に応じ、遺言書と組み合わせるなどして対策を講じます。


海外における「エステート・プランニング」の考え方は、死後だけでなく、生前に起こり得る以下のような状況を考慮した対策となります。


• 生前に自ら財産を管理できなくなった場合

• 未成年や障害などで自ら財産を管理できない子がいる場合

• 家族以外の第三者に自身のビジネス等を引き継がせたい場合 など


エステート・プランニングには、「委任状」や「生前信託」があります。


a) 委任状

 本人が何らかの理由で意思表示ができなくなり、ビジネスや財産の管理を継続することが難しくなった場合に、家族や信頼できる第三者に決定できる権限を与えるために作成する文書です。ビジネスや財産に関するもの、健康や臓器移植、医療行為(延命措置など)に関するものなど、委任された人は本人の意向に沿って委任された事項の管理を行います。


 取消可能な委任状の場合はそれが取り消されるまで、委任された人が死亡やその他の理由で管理不能になるまで有効です。取消不能な委任状の場合は、本人と委任された人が委任状を終了するために書面にて合意した場合にのみ取り消し可能です。


b) 生前信託

 本人が信頼できる受託者に、信託行為によって生前に財産を委託し、受託した者がその目的に従って受益者のために財産の管理・処分を行うことを言います。未成年や障害などで自ら財産を管理できない子がいる場合や、第三者に自身のビジネス等を引き継がせたい場合などに利用されます。


 海外の事業承継は、現地法人の責任者など第三者にビジネスを引き継がせるケースもあると思いますが、事業承継プランと合わせて「委任状」や「生前信託」を検討することも有効な手段の一つとなります。



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