外国人労働者の雇用にかかるレビー(Levy:年次雇用税)の新方式は、当初2021年1月に導入されることとなっていました。コロナの影響を受けて、政府はその導入を今年7月に延期しましたが、このたびさらに2022年1月まで延期されました。今回は、現在提案されている新方式の概要についてまとめます。
1. Multi-Tier Levy Systemの目的
新たに導入されるシステムでは、現行においては一律であるレビー(Single-Tier Levy System)が多層課税方式(Multi-Tier Levy System)に変更されます。産業の高度化のため「インダストリー4.0」を推進し、スマートファクトリーへの投資などに優遇税制を設ける一方で、本システムの導入により低賃金の外国人労働者への依存を減らすことを目的としています。しかしながら、マレーシアの産業が外国人労働者にある程度頼らざるを得ない現実を認めたうえで、より多くの外国人労働者を雇用する企業がより多くのレビーを納付するシステムとなっています。外国人労働者の雇用制度がある国々の中では、シンガポールが既にこのシステムを採用しています。
2. 概要
外国人労働者の雇用に関するプロセスの透明性を確保するため、採用エージェントを廃止し、企業は政府の外国人雇用にかかるポータルサイト「Foreign Workers Centralised Management System (FWCMS):https://fwcms.com.my/」から申請を行います。
現時点で提案されている新システムは、外国人労働者の依存率上限(dependency ceilings)、割当(quotas)とスキルレベル(skill levels)の3要素より構成され、レビー額を含めた各数値については産業ごとの関係官庁や専門家との間での調整が続いています。
まず、企業が外国人労働者を雇用できる上限は産業別に決められます(表1は提案ベース)。
次に、産業別に設定されるTierごとにレビーの納税額を算出します。表2は製造業の計算例になりますが、現行において採用されている一律のレビー額(一人当たり1,850リンギ)から、外国人労働者の雇用が増えるにつれレビーが上昇する仕組みになる予定です。
(表1&2:人的資源省 「DEVELOPING MULTI-TIER LEVY: MALAYSIAN CASE STUDY」より)
3. 企業の労働力をどう構成していくかは中期的な課題
昨年から開始された、外国人駐在員の雇用パス申請時における現地人材への求人義務を始め、政府は「自国民優先」シフトを強めています。その上で、経済への寄与も含めて外国人に頼らざるを得ない部分は、給与要件やレビーを上げるなどして政府の歳入に貢献する仕組みづくりを行っています。
マレーシアでは製造業を中心に多くの日系企業が長年活動していますが、ここ数年、企業の労務コストは現地人材の賃金上昇を含め、コントロールが難しい時期にきていると感じます。企業は、今後自社の労働力の構成をどうシフトしていくか、もしくは労務コストの上昇に備えて製造をより付加価値の高い分野に特化していくのかなど、競争力を維持するための戦略を中長期的に検討する必要があります。
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