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特別自主開示プログラム(Special Voluntary Disclosure Programme (SVDP) 2.0)の概要

 2023年政府予算案で発表されていた所得税の「特別自主開示プログラム(Special Voluntary Disclosure Programme (SVDP) 2.0)」が6月6日に開始されました。今回はその概要についてまとめます。


1. 特別自主開示プログラム(Special Voluntary Disclosure Programme (SVDP) 2.0)とは

 本プログラムは、過去に納税者が税務申告を怠っていた、もしくは少なく申告していたような場合に、その申告や修正を促す目的で、この期間に自主的に申告納税を行えば通常税務調査等で把握された場合に科されるペナルティが免除となるというものです。前回は、18年から19年にかけて行われ、内国歳入庁(LHDN)の発表によると期間中に28万人(社)の納税者が申告を行い、78億リンギの税収に貢献したとしています。


2. SVDP 2.0の概要

 SVDP 2.0は、23年6月から24年5月までの期間に行われ、今回の対象となる税目は所得税(個人および法人)、不動産譲渡益税(Real Property Gains Tax:RPGT)、印紙税になります。納税者がSVDP 2.0に参加するメリットは、下記の2点です。

  • 税務調査等で追徴されれば15~300%のペナルティが科されるところを、SVDP 2.0期間に自主申告した分にはペナルティが科されない

  • 自主申告が認められた年度の税務調査は将来的にも行われない

特別自主開示プログラム(Special Voluntary Disclosure Programme (SVDP) 2.0)概要
特別自主開示プログラム(Special Voluntary Disclosure Programme (SVDP) 2.0)概要

 SVDP 2.0に参加できる要件は納税額が発生する場合のみで、修正申告したものの納税額が発生しない場合や還付になる場合は対象とはなりません。また、現在税務調査が行われている納税者については、調査の対象となっている年度については行うことができません。


3. 申告フロー

申請は、LHDNのサイト(https://www.hasil.gov.my/en/special-voluntary-disclosure-programme-svdp-20/)からSVDP フォームをダウンロードして行うか、既存の納税者の場合は税務申告のポータルサイトから行います。提出後、LHDNは提出された申請がSVDP 2.0の要件を満たすかどうかと、その計算内容に関する確認を14営業日以内(移転価格の場合は30営業日以内)に行うとしています。申請が認められた場合、通知日より30日以内に納付することになります。分割納付を申請することも可能です。


 自主開示プログラムは、納税者側には過去に申告の誤り等があった際に自主的に申告することで、ペナルティや税務調査リスクから解放されるというメリットがあり、税務当局側には税収を上げることができるメリットがあります。政府は22年予算案で18歳以上の全マレーシア人に対する納税者登録((Tax Identification Number: TIN)の義務付けを発表し、その実施により新たに780万人が自動的にTINを取得しました。先に行われたプレスリリースでは、LHDNは本プログラムの実施により課税の裾野を広げることを目標の一つに挙げ、例としてTiktoker、インフルエンサーなどの個人の納税者への参加を推奨しました。また、23年より国外源泉所得に対する課税の取り扱いに変更があったことから(「基本からわかるマレーシア税務・会計」第45回~国外源泉所得に対する課税~参照)対象所得の申告が漏れている場合にも活用してほしいとしています。


 これを機に過去の申告状況が税法に沿ったものになっているかを今一度チェックのうえ、誤り等がある場合は本プログラムを活用することで税務リスクを軽減することができるかを判断されてはいかがかと思います。




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