税務当局は10月20日、Tax Recovery(納税者が税務債務を負ったままマレーシアを離れること防ぐための手続き)に関するガイドラインをアップデートしました。このガイドラインでは、未払いの税金がある納税者がマレーシアを出国しようとする場合、税務当局はイミグレーションオフィスもしくは警察に出国差し止めの請求を出し、出国を停止させたうえで納税を促すことができるとしています。対象は個人だけでなく現地法人の取締役も含まれます。
本規定は2015年に発表されたもののアップデートになりますが、今回は本規定に関連するタックスクリアランス(税務債務の完済手続き)についてまとめます。
1. 本ガイドラインの概要
まず、対象となる税目には、本税(個人所得税、法人税)のほか、ペナルティ、見積税金、源泉所得税などが含まれます。税務当局は、予めイミグレーションオフィス・警察に通知することで、これらの納税債務を負った納税者(マレーシア人、外国人、法人の場合はその取締役)がそれを完済しないままマレーシアを離れようとする場合、イミグレーションオフィスはパスポートを没収するなどしてその出国を一時的に停止し、未払税金を完済することを促す措置を取ることができます。
従前は紙ベースでの通知でしたが、2021年以降はより迅速に対応するため電子ベースで通知することができるようになっています。この措置が取られた納税者には、200~2万リンギの罰金、または6ヶ月以下の禁固刑またはその両方が課される場合があります。
2. タックスクリアランスにおける雇用者の義務
現在は、会社に雇用されている外国人納税者が退職もしくは帰任する場合、雇用パスの抹消にあたり事前のタックスクリアランスは必須となっています。タックスクリアランスは雇用者の義務でもあり、雇用者は税務当局に届け出を行うとともに、税金完済に十分な納税資金を予め従業員から預かり、タックスクリアランス時の税務査定により追徴の税金が発生した場合は、従業員に代わって納税する義務があります。
3. タックスクリアランスにおける納税者(従業員)の義務
タックスクリアランスを行う際、従業員は退職した年の確定申告と過去の申告が適正に完了していることを確認し、確定申告時に所得控除などを行っていればその証拠書類を税務査定の間に依頼されれば提出できるように準備する必要があります。パスポートの全ページコピー(パスポートの真正認証が別途必要)および入出国履歴は納税者の居住判定(マレーシアの滞在日数により居住者・非居住者を判定)に必要になります。
4. タックスクリアランスにおける税務当局の義務
タックスクリアランス申請が提出されると、税務当局は税務査定を行い所得税の再計算および未払税金の有無を確認します。通常、申請受理日より10~14日以内にタックスクリアランスレターが発行され、未納や追徴税額がある場合、納税者(雇用者)は速やかに納税を行うことになります。完済せずに出国しようとする場合、上記1に記載する出国差し止めの請求がイミグレーションオフィスに対して出されることになります。
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