top of page

移転価格文書の簡易版テンプレート

 税務当局は2022年11月、企業がその親会社もしくはグループ会社との取引がある場合で、マレーシアの「移転価格税制に係る文書化」の適用外となる場合であっても最低準備すべき項目をまとめた簡易版のテンプレートを公表しました。


1. 移転価格文書の作成基準


 マレーシアの移転価格税制ガイドライン(Malaysian Transfer Pricing Guidelines 2012)では、企業がその親会社もしくはグループ会社との取引がある(関連者取引)場合、毎年法人税確定申告の提出期限までに移転価格文書を準備する義務があります。


 一方で、文書の作成にかかる負担を軽減するため、取引の規模により文書のスコープを設定しています。具体的には、関連者取引がある企業で、下記の作成要件に該当する場合は全ての項目を網羅したフルスコープの文書を作成し、それ以外の企業はフルスコープの文書もしくは簡易版の文書を作成すればよいことになっています。


移転価格文書の作成要件と文書の項目
移転価格文書の作成要件と文書の項目

 税務当局は、企業が自身の文書作成要否について判定できるよう、判定フローチャートを作成しウェブサイトに公開しています。


2. 簡易版の移転価格文書テンプレート


 今回公表された簡易版テンプレートは、1の判定により関連者取引はあるがフルスコープの文書までは作成しなくてもいい企業が、最低準備しておくべき事項をまとめたものです。これまでは簡易版の作成に関してどの程度詳細に準備しておくべきかの基準がありませんでしたが、これにより一定のレベル感が提示されたことになります。


簡易版の記載項目
簡易版の記載項目

3. 作成しなかった場合のペナルティが強化されている


 2021年より、税務署から移転価格文書の提出を依頼された日から14日以内(もしくは税務署が指定する期限)に文書が提出されない場合、2万~10万リンギの罰金が課されることになっています。これは作成を怠ったことに対するペナルティであり、税務調査により移転価格を指摘された場合のペナルティとは別になります。


 今回、簡易版の作成要領が明確になったことで、税務当局は関連会社取引があるすべての企業が対応することを求める可能性があります。税務調査等の際に、文書の作成を怠ったことで安易にペナルティを科されないよう準備をしておくことが重要です。


Comments


bottom of page