コロナがもたらしたビジネスへの影響の中で、海外の現地法人が受けているものの一つに「ヒト」の移動制限が長期化していることがあります。多くの国が外国人の入国に対し何らかの制限を行っており、一時帰国した駐在員がまだ日本で待機しています。また、労働力を外国人労働者に頼る国では、普段から「密な」状態で生活している外国人労働者からクラスターが発生し、コロナ禍でその入国を制限せざるを得なくなっています。
海外の現地法人において、駐在員や外国人労働者の移動制限が長期化することで、業務に下記のような影響が出ています。
1.駐在員の不在による業務への影響とその対策
a. 会社の運営・管理
現地法人における駐在員の役割は多岐にわたります。一方で、事業の成長とコスト削減の観点から、既に現地化を進めている日系企業も少なくありませんが、コロナの影響でその流れは更に加速していくと思います。
現地化を進めるにあたっては、リモートコミュニケーション等ハード面の整備もさることながら、今まで駐在員ありきで行ってきた業務手順の見直しや、内部統制の強化などのソフト面の整備も重要です。不正防止の観点から、一部の業務や財務諸表の定期的なレビューなどを外部の専門家に委託するなどの対策も考えられます。人事面では、より事業戦略に直結した人の採用と、人事評価の「見える化」がスタッフのモチベーション向上につながり、ひいては事業推進のカギになります。
b. 営業・新規市場開拓
日本企業とって海外マーケットの重要性が増しつつある中、人との接触への配慮が必要で自由な移動が制限されるいまの状況は、営業活動に大きな支障があります。販売市場獲得のための現地企業のM&Aは加速していますが、現地パートナーとの関係強化はアフターコロナにおいてますます増えていくでしょう。ウェブ会議の浸透はコロナがもたらしたプラス要因の一つです。自社の商品を現地の会社にテスト販売してもらい、リモートでウェブ営業を行うといった試みも今の状況下では抵抗なく行えるかと思います。
2.外国人労働者の減少による業務への影響とその対策
かつて日本企業は、安価な労働力を求めてASEANに進出してきました。今はシンガポール、マレーシア、タイなどは外国人労働者に頼らざるを得なくなってきていますが、外国人労働者に関しては、常にその時の各国の政策も影響し、安価な労働力を安定的に調達することが難しくなってきています。また、そのような国では企業に対し、優遇税制などを設け作業工程の自動化を推奨しています。現地法人も、今まで外国人労働者に頼っていた工程を、優遇税制を活用することで自動化する長期的な費用対効果を検討する時期に入っていると感じます。
ASEAN各国のコロナ経済対策では、自国民の雇用創出やトレーニングの機会を与えることに対するインセンティブなどが打ち出されており、国の経済において自国民をコア(中枢)に置く動きは進んでいくと思います。現地法人は、このような流れを把握しつつ、どんな状況においても利益を生むことができる体制にしていくことが生き残りのカギと言えます。
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