キャピタルゲイン税の導入
2024年政府予算案を受け、キャピタルゲイン税(資産等の譲渡益課税)が3月1日から本格的に導入されます。 1.課税対象 (a) マレーシアの非上場会社株式の譲渡益 (b) マレーシアに不動産を保有する外国会社株式の譲渡益(外国会社が保有する有形資産のうち75%以上が不動産等で、その会社の75%以上の株式を保有する場合:75%ルール) 尚、不動産および不動産を主体とする会社の株式の譲渡益については、キャピタルゲイン税ではなく、不動産利得税(RPTG: Real Property Gains Tax)が対象となります。 2.納税義務者(対象者) 納税義務者は法人(外国法人を含む)のみとなり個人は対象外となっています。 3. 税率 (1) マレーシアの非上場会社株式で、24年1月1日より前に取得した株式: 下記より選択 ・ 譲渡益の10% もしくは ・ 売却額の2% (2) マレーシアの非上場会社株式で、24年1月1日以降に取得した株式: 譲渡益の10% (3) マレーシアに不動産を保有する外国会社株式 : 譲渡益に対し、法人税率(通常税率24%) 4. 申告・納付 申告・納付期限 :譲渡日(株式を処分した日)より60日以内 「譲渡日」の定義 :譲渡契約書の締結日 (譲渡契約書がない場合)処分完了日 → 処分完了日とは、所有権の移転日もしくは移転したとみなされる日、もしくは譲渡者が譲渡対価を受領した日のいずれか早い方 譲渡益の計算 :譲渡益 = *譲渡対価 – (譲渡原価 + 弁護士費用・不動産鑑定費など譲渡関連費用) *譲渡対価は、関連会社間による譲渡の場合は、公正市場価格となる 申告方法 :下記の税務当局サイトから電子申告にて行う https://mytax.hasil.gov.my 5. その他 実務上ではグループ内の組織再編や、M&A等で現地法人の株式譲渡を行う場合にキャピタルゲイン税の課税インパクトについて検討することがありますが、仮に国内法で株式譲渡益が課税となる場合でも、譲渡者が所在する国とマレーシアが締結する租税条約において課税権を規定している場合、国内法に代えて租税条約を適用することが可能になります。参考までに日本とマレーシアが締結する日馬租税条約では、日本企業が株式を保有するマレーシア法人の株式譲渡によりキャピタルゲインを得た場合、現状ではマレーシア側の課税権を認めています。仮に同じ譲渡益に対し日本とマレーシアの両方の国で課税されることになる場合、二重課税を排除するため日本で外国税額控除を行うことを検討することになります。 2024年政府予算案では、グループ会社の組織再編による株式譲渡については免税措置が講じられる旨発表されていましたが、現時点ではその詳細は発表されていません。