利益の源泉の「見える化」とIoTの活用ポイント
財務管理や経営改善のご支援の中で、「複数の製品(顧客)を取り扱っているが、どの製品で採算が取れ、どの製品で取れていないのかよく分からない」「見積り上は儲かっているはず(実績は赤字)」という声が聞かれます。利益は、「売上-原価-経費」で計算されますが、中でも原価管理は強化したいものの、見えづらくコントロールが難しい分野かと思います。今回は、原価管理の重要性とIoTの活用ポイントについてまとめます。 1.利益の源泉をタイムリーに「見える化」する トレンドの移り変わりが早い今の状況下において、企業は「どの製品(顧客)がいまの利益の源泉となっているのか」をよりタイムリーに把握し、採算が取れているものを強化し、不採算なものは継続するのか否かを含めた判断を随時行っていく必要があります。製品(顧客)別に採算性をリアルタイムでモニタリングしていく重要性は増してきています。 2.原価管理を継続して行う重要性 原価管理について 現場で話を聞くと、「材料費については紐づけできるが、労務費や間接費の配賦が難しい」「そもそも現場データの信ぴょう性に疑問」「正確な原価計算に割く労力がない」といったことが聞かれます。原価管理で重要なのは「継続」です。情報を収集し、一定の計算式を用いて分析、それをモニタリングしながら必要に応じて修正を加えることを継続することで、経営分析に有用な指標が必ず見えてきます。 3.原価管理におけるIoT活用のポイント 最近では、多額の投資をせずとも部分的にIoTを導入することでに、原価管理に役立つツールが増えていると感じます。 a. モニタリングツール 例えば、電力消費を抑えたいが、機械が古く配線も複雑になっており、機械ごとの電力使用量を把握できず具体的な対策が取れない、という話はよく聞かれます。各機械にセンサー等を設置し、リアルタイムに収集した消費電力データを機械ごとの稼働状況と合わせて分析することで、削減に向けての対策が見えるだけでなく、予兆監視の効果も期待されます。 b. 現場データ収集の正確性・効率化 原価管理に必要な現場での生産活動にかかるデータは、人を介して紙媒体で収集されていることがまだまだ多いのが現状です。これらのデータを自動取得すればヒューマンエラーがなく、また蓄積されたデータをナレッジ化することで現場の改善に活用できます。例えば「不良品」の発生を把握する検品工程のIoT化は、ヒトの感覚を排除し、正確な原価管理に役立つだけでなく、工程にかかっていた人件費の削減による費用対効果が中期的に期待できます。その結果生まれたキャッシュを、人にしかできない業務や研究費などに還元し、より高い技術力が生むことが可能になります。 製品ごとの利益管理に必要な管理会計は、会社の決算である財務会計の数字と見え方が異なる場合もあるため、これを合わせるまたは違いを説明することも実務では難しいポイントになります。海外の工場が、安い人件費で安く製造できる時代は終わっています。IoTや外部の専門家を活用しながら、効率的に利益を生む体制を作ることが求められています。